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ヒトカゲ【SS】
ヒトカゲ、それはヒトを映した様なカゲ。鏡のようにヒトを映し、揺らめく炎に人はどんな幻影を見るのか。

ヒトカゲ

目の前に炎があった。暑苦しい。赤く大きな火が、寝転がる僕の顔に熱波を送る。
ヒトカゲは床に腰掛け、ぼくに背を向ける形で爪をといでいた。床にたれながらも先端は上向いている尾を、ぼくはじっと見つめる。
「ねぇ、ヒトカゲ。この尻尾の炎が消えたら、君は死んじゃうって、知ってたかい?」
笑みを含んだように問うと、ヒトカゲはちらりと視線を横目に向けてくる。あえて視線を合わせず、ぼくは炎を見つめ続けた。
熱い。生死に関わるものということは、命の源ということであり。その命の結晶は赤く熱く煌々と照り輝いている。
ぼくは炎の根元、尾の先へと手を近付けた。熱い。焦げたにおい。そのまま握りつぶそうと、炎を消す様に手の隙間を少しずつ小さくしていく。手のひらがじりじりと焼けていく。
尾が揺れた。尻尾が手元から離れ、見上げるとヒトカゲがまるでぼくの手を睨むように見ていた。
思わず、笑みがこぼれる。
「ふふっ、君はぼくの体が心配なのかい? 自分が殺されるかもしれないというのに」
体を仰向けに転がした。瞼をおろしたぼくの瞳に、それでも闇を通して炎は揺らめく。
――何をしているんだろう。
笑みが、嘲笑へと変わる。光をすべて遮るように、顔へ腕をかぶせた。
例えぼくが何をしようとしていたとしても。
ぼくは、ヒトカゲが自分の命を救うために尾を離したのではなく、ぼくの手を気遣ったがゆえに尾をどけたのだと、判断したのだ。
炎はときに幻影を移す。幻影のもとは現実。幻影は己に内在される現実。
ぼくは“ヒトカゲ”に何を見たのだろう。死にたかったのだろうか。殺したかったのだろうか。救われたかったのだろうか。
頬に温かい感覚があった。ぺろりと、すくうように頬を撫でられる感触。
「別に、ぼくだって泣きたいときくらい、あるさ」
現実なんて生きる価値のないものだと思うけれど。それでも熱も温もりも、感じることがある。
「あちぃ……」
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【2009/05/15 02:36 】 | 未分類 | page top↑
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