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ゼニガメ【SS】
ゼニガメ、それが持つは涙の水圧と哀しみの誘惑に耐える強さ。




ゼニガメ



自分の“からにこもる”。
自分の身を守るために、自分のからにこもった。外界から自分を遮断して、一人ずっと泣いていた。抱えた膝が震え、涙が止まっても心の中はずっと湿っぽかった。
寒いと感じた。ずっと河原に腰かけていて、急に寒さを感じる。そして同時に自分は今川原にいるのだと思い出す。気づくと、隣にゼニガメが座っていた。
ゼニガメはただ何も言うこともなく黙って前を向いて座っていたので、ぼくも無言で再び顔を腕の中にうずめた。
寒い。
「父さん……」
腕の中で、枯れた声が漏れただけだった。
また、“からにこもる”。
ゼニガメのように手も足も顔も引っ込めて、甲羅の中に逃げ込む。一人暗闇で耐え忍ぶ。
父が好きだった。家族三人、ゼニガメの一匹で、とても仲のいい家族だった。父は優しかったし、いつも自分のことを考えてくれて、そしてお人よしだった。少しひ弱なところもあるけれど、家族のことになると真剣な顔つきになった。
父が大好きだった。
ゼニガメをぼくにくれたのも父だった。お前はゼニガメといっしょに強くなりなさい、といってゼニガメを渡してくれたのは父だった。皮肉なことに、今ぼくはそのゼニガメのようにからにこもっている。
父が、大好きだったのだ。
ゼニガメは、ぼくには構わず川に向かって“あわ”を吐いている。
「お前は、悲しくないのか?」
聞こえているのかいないのか、ゼニガメは宙に浮かぶ“あわ”に向けて、みずてっぽうを吹いている。
「……薄情な奴だな」
冷たい衝撃を食らった。側面から諸に顔にみずてっぽうを食らったらしい。
「お前……いい加減にしろよ!」
顔をあげる。怒鳴り声をぶつけゼニガメを見据えると、ゼニガメは既にぼくを見上げていた。
ぼくはその瞳に動きを止めた。
怒ったような、悲しいような、それでいて強い眼差し。少しうるんで見えるのは、ぼくの目がみずてっぽうで濡れたからだろうか。先ほどまで遊んでいた様子からは想像できない、強い意志をもった表情がぼくに対面している。
もう一度みずてっぽうを食らった。正面からの水圧。
顔が濡れ、髪が濡れ、シャツが透ける。睫毛に滴るしずくで、目の前がうるむ。
今度は怒らなかった。顔をうつむけると、髪から滴る水がズボンを濡らすのが見える。
悲しんでいないわけがなかった。長い間一緒に暮らしていた父が、あんなにも一緒に遊んでくれた父が亡くなって、ゼニガメが悲しくないわけがなかった。
からにこもるのは簡単だ。手足も顔も引っ込め、自分だけのからにこもればそれでいい。ゼニガメの得意技のはずだった。けれど、ゼニガメはそれをしない。現実を見据えて、じっとからにこもりたいのを耐える。正直ゼニガメはあまりレベルも高くないけれど、それはどれだけ尊い強さだろう。
母が浮かぶ。からにこもり外へふらふらと出歩くぼくの背を、母はどんな顔をして送り出していただろうか。
顔をあげる。正面にゼニガメがいた。今にも泣きそうな顔で、そっとぼくに笑いかけてきた。悲しみを堪える目の前の家族が愛らしく、笑みを返したぼくのまなじりから、一筋雫が伝い落ちた。
ゼニガメは産まれたときの甲羅はとても柔らかくもろいものだという。やがて身を守るため、ぼくのげんこつなど容易にはじいてしまうほどに甲羅は固く強くなる。
身を守ることは必要だ。ときにはからにこもってしまうこともあるだろう。
それでも。からにこもってしまったとしても、顔だけは出しておきたいから。ぼくの涙(みずてっぽう)が、大切な誰かを傷つけていることにさえ、気づけないかもしれないから。
「……それでも、今はまだもう少し、泣いてもいいかな」
答えるゼニガメの鳴き声は、震えていただろうか。







初めの一文(「ゼニガメ、それ~」のところ)いいのが思い浮かばないです\(^0^)/
最後のまとめ方も悩みに悩んだ感じなのでさらに悩んでまたのちに変更したりして。
書き始める最初の段階ではホントは、途中で「いい加減にしろよ!」といって怒鳴ってびっくりしてからにこもったゼニガメをぼこぼこ殴るというシーンを考えていましたが、それなんてヤンデレなのでやめました。
あと個人的にポケモン世界はポケモン以外にも動物がいるという設定で話を書いています。

実はこのSSに考えてたタイトルは「からにこもる」だったり。ヒトカゲとフシギダネもそれぞれ元々「命の炎」と「不思議な種」というタイトルをつけようと思ってました。わかりやすいようにポケモンの名前タイトルにしてるけど。サイト用にのせたりするときに変わってるかも。
フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメの三匹は自分にとってのポケモンの原点なんですよね、やっぱ。
悪戦苦闘しつつ、結構その草、火、水、三種の雰囲気でそれぞれのSSをいい感じに書けたかなと思います。

でも書いてて思ったこと。ポケモンでちょっと病んでる感じの話って書くの楽しい←
つか書くたびに長くなってる気がする。短いほうが書きやすいっぽいので、できるだけ短めにできるようにしよう。

ってか関係ないが、だれかおらと一緒に夏休みポケモン見に行かないか! アルセウスをもらいに……!
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【2009/05/20 02:11 】 | ポケモン | page top↑
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