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【SS】雨流し
退屈は人を殺す。


雨流し





暇だと呟くことは簡単だ。やるべきこともなく、もしくはやるべきことはあるのに何もせず、やりたいこともない怠惰な念を口から溜め息のようにもらすだけならば誰でも容易にできる。
けれど暇を埋めることは難しい。暇だと呟くものは大抵やる気がない場合が多いため、ありきたりなものを提案しても面倒くさいと一蹴される為に難儀だ。
雨が降っている。
僕は暇だと呟いた。
やるべきことはもしかしたら探せばあるかもしれないが、探す気もやりたいこともない僕は、ただ湿った空気の流れに身をゆだねて、窓口から雨が降るのを眺めている。
腰掛けた桟は冷え切っている。窓に押しつけた僕の頬を、ガラス越しに雨が伝っていく。
僕は暇だと呟いた。
聞くものは誰もいない。
部屋の中には僕一人きりで、呟いても暇を潰してくれる人もいない。
僕の吐いた息が窓を白く染める。
息を止めた。そうすれば、窓はまたすぐ透明に戻るだろう。
こんなことをしていて何になるのだろうと頭の隅が考えながら、僕は息を止め続ける。
苦しくなる。けれど息は止めたままだ。
例えばこの雨が地に流れることなくかさを増し人の背を越えるほどに溜まっていきそこに飛び込んだならば、もっと苦しいだろう。
もっと、もっと苦しいだろう。
ガラス映しに見える僕は、かつてもっと苦しい思いをしたに違いないのだ。
息を止めるまでもなく息ができない水の中で、あがいてもがいて苦しくて今の僕のように息を吐き出すという選択肢さえなかったのだ。
今の僕は、贅沢だ。
なぜこんなことを考えているのだろう。脳に酸素が足りないから余計なことを考えてしまうのだろうか。いや本当に苦しくて酸素が足りないなら、何も考えられずただ息をしようともがくことしかできないはずだ。
僕は息を吐いた。息が乱れる。大きく深呼吸する。湿った空気だった。
雨の空気が部屋に染み込み、僕の体に入り込む。
僕は暇だと呟いた。何もする気が起きない人が、暇だと呟いたところで何が変わるだろうか。
何もやる気が起きないのだ。
外は雨が降っている。
雨はすべてを流してくれるという。汚れたものも悲しみもすべて流してくれるなんて、どこのロマンチストが唱えたのだろう。
雨が目に映る。網膜に焼き付く。僕の心に雨が降る。
本当に雨がすべてを流してくれるというのならば、その後に残った雨を流すにはどうすればいいのだろう。
雨はそのうち乾くだろうか。陽の当たらない場所も、カラカラと乾いてくれるだろうか。
きっとその前にまた雨が降る。雨が雨を流して、そこにまた雨が残る。陽の当たらない湿った部屋の中に、また雨が降る。
乾くことは、ないのだ。
雨が降っている。
僕は暇だと呟いた。
聞くものは誰もいない。
何もやる気がない人が暇だと呟いたところで、やることなんて、雨に流されるくらいしかないだろう。
雨が、降っている。





講義中に携帯で一時間くらいで書いたやつです。

『退屈は人を殺す』
日常的に人は暇だと口にしますが、それは暇をどうにかしたいということで、きっと死にたくないという気持ちの表れなんでしょうね。
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【2010/04/15 14:40 】 | 未分類 | page top↑
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