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【お題】眩しすぎるのは太陽じゃなくて【SS】
久しぶりのお題。
あまりワンパターンになるのもあれかなと思っていたら、気が付いたら少し斜め上に向かっていました。


お題配布元
○恋したくなるお題 配布
http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/

■消化済みのお題
恋愛感染メール
キスとキスの合間に
優しく積もる淡い雪

眩しすぎるのは太陽じゃなくて



――なぜおれはバンジージャンプをすることになっているのだろう。
眼下に流れる川を見下ろしながら、青ざめた表情で雅臣は改めて胸中で自問してみる。自問というか、本当は背後で控えている人物に問いかけてやりたいのだが、聞いてもどうせ理解できる返事が返ってくるわけでもないし、そもそも怖くて声が出ない。
「大丈夫だって」
気が付いたら、背後で控えていた友人――透馬が雅臣の肩にぽんと左手をかけ、右手の親指をたてて無責任な笑みを浮かべていた。
「お前ならイケる」
「ちょっと黙れ」
本当ならもっと長々と罵詈雑言を吐き出し彼を責め立てるところだが、体が竦んで口から出る台詞は短い。足が震え、その震えが全身に伝わり、あまり多分に喋ると声まで震え怯えているのが分かってしまうかもしれないというのもあった。
改めて橋の下を見下ろす。
川の流れは速い。前日に降った大雨が影響してか水嵩は増し、いつもはなだらかだという川にしては水面に突出している岩が水しぶきをあげている。それでもバンジージャンプには影響のない程度らしいが、飛び込み台となっている橋は雨で湿り、いつ足を滑らせるかと冷や冷やする。
唾を飲む。喉が上下する。心臓が痛いほどなっている。見下ろすと目眩がしそうで、けれど目を逸らしても瞑っても見えないだけに余計に怖いだけだ。
息を整えた。深呼吸しても整わないことも、心が落ち着くこともないことも分かっている。ただ、何もしないでじっと足を竦めて遥か下の川の流れを見続けていることなんてできない。
「怖い?」
笑みを含んだように、耳元で囁く声。
どくん、と心臓が跳ねた。それまでも落ち着かなかった鼓動だが、一層暴れて止みそうにもない。
――近い。
きっと正面から見られたら自分の顔は真っ赤に染まっていて、いやむしろ透馬の息の当たっているその耳が、既に赤くなっているかもしれない。
背筋がぞわぞわと粟立ち、体が震えそうになるのを必死に押さえる。
「怖いんだ?」
――だから、近いって。
怯えと羞恥とよく分からない何かが混じり合って、体中から汗が吹き出してくる。密かに手をシャツの裾で拭う。
彼は、自分の気持ちが何も分かっていないのだ。
そもそも、雅臣がバンジージャンプをする羽目になった諸悪の根源は、今人の気も知らないで背後でにたにた笑っているだろう透馬だ。
なんていうことはない、いつも振り回すのは透馬で、振り回されるのは雅臣というだけのことだった。
「なあ、バンジージャンプしようぜ」
それは先週の金曜日、キャンパス内の大学帰りのことで、いつも通りのことだが、唐突に透馬はそう言い始めたのだった。
「はあ?」
いつも通り、気のない返事をする。場合によっては食いついたと思われても仕方のない返事ではあることが、自分では分かっていない。本当は返事もしないで全スルーしたほうが後々のためにいいかもしれないのだが、学習能力のない雅臣である。いや、無視をしようと思ってもできないのだろうけれど。
「何、お前今なんて言った? いや繰り返さなくていいからもう黙れ」
それだけ続けて顔を前に戻し、すたすたとキャンパスを歩き去ろうとする。
「ちょ、待てって話聞けよー」
「やだお前の唐突な話は聞いてるとろくなことがない」
早口に言いたててひたすら歩みを速めるが、透馬は腕を両手でつかんで、雅臣を止めようとしてくる。
「なあなあバンジージャンプしようぜー」
「絶対ヤダ」
「何高所恐怖症?」
「ちげえ」
すげなく短い台詞を返して、透馬を引きずるように逃げながらひたすら勧誘攻撃から避ける。
「なあなあとりあえず何でおれがそんなこと考えたかとか聞きたくねえ?」
「ない」
「ほら、『そうだ、京都に行こう』ってCM見てさ、それでおれ『そうだ、バンジージャンプしよう』って思ってさ」
頼んでもないどころか断っているのに勝手に話し始めた透馬だったが、その内容はいつも通り以上にくだらないものだった。
「なんだそれ何でそうつながるんだよ」
引き摺りながら、思わず突っ込んでしまった。愚者は同じ過ちを何度でも繰り返すものである。
「いやー、そんなのおれもわかんねえよ。っつか思いついちゃったんだから仕方ないじゃん!」
なぜか逆切れされていた。
そろそろ腕が痛く肩も外れそうだったので、ようやく歩みを止めて振り返ってやることにする。
急に止まったためにバランスを崩して、おっとと言って雅臣は立ち上がった。
「なにお前そんなにバンジージャンプしたいの?」
「いやうん、そんなにって言うか思いついたからにはなんとなく。なになに雅臣も一緒にやってくれるんだありがとう嬉しいー」
「一人で行け」
えーやだやだやだー。雅臣の腕を離さず、子どものようにダダをこね始める透馬。まだキャンパス内で、周りに学生もいるため人目が気になって恥ずかしい。
「あーもーちょっと離れろ暑苦しい」
「やだやだ一緒にいってくれるっていうまではなれないー」
必死に引きはがそうとする雅臣に、必死に食いついてくる透馬。はたから見ればただの滑稽なやり取りにしか見えないだろうが、雅臣は内心心臓が張り裂けそうな気持ちでいっぱいだった。
自分の気持ちも知らずにこうして過度なスキンシップを測ってくる透馬に、時折体が反応してしまいそうになる自分がいる。目ざとい透馬に感づかれないよう必死に抑えながら透馬をどうにかしてあしらうのは、至難の業だ。
気にかけている人がこんなにも体に触れてまとわりついてくるのだから、平常心でいられるわけがないのだ。
執拗な誘いよりも、誘いに伴う体への接触のために、いつも折れるのは雅臣だった。
「あーもー分かったから! 分かったから離れろ!」
「え、一緒に行ってくれんの? ありがとー!」
そう言って今度は首に腕をまわしてくる透馬。かあっと頬が赤く染まるのが分かった。
「もう暑いっての!」
そう言いながら、本気で引きはがすことのできない自分がいた。
振り回されるのはいつものことで、こうして唐突にやりたくもないことをやらされてしまっている自分は情けないとも思うが、一緒に透馬とどこかに出かけられるということが嬉しくないわけでもない。本当は断ろうと思えば断ることもできるはずだけれど、そうしないのだから現状に至っている事態に自分に非がないわけでもなかった。
好きな人から、一緒に何かをやろうとしつこく迫られると、無下に断れないものだった。
「無理しなくてもいいんだよ?」
あれだけ強引に誘いながら、今こうしてこういう言葉をかけてくる。言葉面だけを捉えれば心配している風だが、声には含み笑いが感じられる。
気が付いたら透馬の腕は雅臣の胸にまで回って、背後から抱きしめられる格好になっていた。
これはさすがにヤバい。ヤバすぎる。心臓が爆発しそうだという比喩が比喩でなくなる程度にうるさく鳴っていた。
正面は足場もなく、逃げ場がない。
「……やる」
一度やると言ったからにはやる。何しろここまで来てしまったからには雅臣が引き返さないのが分かっている上で透馬はそういう言葉をかけてくるのだから、タチが悪い。
「そう。でも怖いんでしょ?」
囁くようにかけられる言葉。他にも客がいるのに、その中でここまで密着してくるなんて、いい加減にしてほしい。
振りほどこうにも暴れると足を滑らせて落ちてしまうかもしれないし、声をあげて他の人に聞こえるのも恥ずかしい。
「……お前のせいだろ」
「ははは、ごめんごめん。責任とるよ」
どう責任を取るというのだろう?
いちいち、透馬の言葉の意を変に解釈してしまいそうな自分に嫌気がさす。
「決心付くまで、ずっとこうしててあげようか?」
「……離せよ」
「離していいの? 離したら怖いんじゃない?」
何も言い返せなかった。透馬に腕を回されて恥ずかしい一方、支えられて安心している面もある。このまま背を預けてずっと抱かれていたい、そう思ってしまう。思って、更に顔が紅潮するのがわかった。
「なあ雅臣」
一層ぎゅっと抱きしめて、耳元に口をあてる透馬。返事をすることすらできなかった。色々なものに挟まれ、頭が混乱している。こういうのを板挟みというのじゃないだろうか。
「……そろそろ、飛び込んで、こいよ」
それまでのおちょくるような様子と変わって、神妙な声色になった透馬に不審を覚える前に、体に回されていた腕が外れ、体温が離れて行った。
「あっ」
惜しむような声を出して気づいたら振り返っていた。恥ずかしい。
太陽を正面に迎え、思わず目をつむる。逆光で影になって透馬の表情はよく分からなかったけれど、雅臣には口角を釣り上げてにやりと笑っているように見えた。
普段と違った様子の透馬に眉を寄せながら、あまりの眩しさに目をそらし正面に向き直る。あまり振り返って見ていても、もっと抱きしめていて欲しかったと訴えているようで、恥ずかしいことこの上ない。
透馬に乱された呼気を整える。眼下には流れの速い川。飛び散る水しぶきに太陽がきらきらと反射して、見ようによっては綺麗だ。
バンジージャンプなんてやったこともないし、この恐怖は飛び込んだ先が怖いというよりも、飛び込むこと自体に対する怯えだろう。高いところから飛び込む行為というのは、高所恐怖症でない人でも恐怖を感じるものだ。
――飛び込んでみなければ分からない。
透馬に果たしてバンジージャンプの経験が過去にあるのかどうかも分からないが、透馬が誘うのだからきっと怖いばかりのものじゃないはずだ。もしかしたら、あの陽が射す宙の中に飛び込んだら気持ちいいかもしれない。
そう思い込むことにする。
背後を一度振り返る。余裕とまではいかなくて、少し情けなかったかもしれないが精一杯不敵に笑うことができただろうか。相変わらず逆光で表情は分からないが、きっと透馬は笑ったのだと思う。よく見れば分かったのかもしれないが、あえてよく確認せず、正面に向き直る。
眩しい。それだけが改めて分かった。今はそれで充分だ。その先は、飛び込んでみれば分かるかもしれない。
何となく、そんなことを思いながら。
雅臣はもう一度だけ唾を飲み込んで、もうなるようになれと半ば吹っ切れながら、地を蹴りあげて、そして目の前に景色に飛び込んでいった。





BL=バンジージャンプ・ラブ。そんな感じでお送りいたしました。
唐突に何かをやろうと言いだすというキャラをよく書く気がするんですが、それはもしかしたら自分がそうだからかもしれません。透馬ほどフリーダムなわけじゃないはずですが(苦笑)
ちなみに、風(管理人)は誰にそそのかされようと絶対にバンジージャンプなんてやりません←ここ重要
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【2010/07/26 03:34 】 | 未分類 | page top↑
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