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【お題】受け止めるよ 何度でも【SS】
友達以上恋人未満っていい感じの関係ですよね。受けに振り回される攻めとか好きです。デレもないけどデレ気味なツンとか好きです。
何も考えないで書くとやまもおちもいみもなくなるのはいつものこ(略
お題からどうしてこういう出だしになったのか、よくわかりません。



お題配布元
○恋したくなるお題 配布
http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/

■消化済みのお題
恋愛感染メール
キスとキスの合間に
優しく積もる淡い雪
眩しすぎるのは太陽じゃなくて
受け止めるよ 何度でも



「好きだー!」
「はいはい」
突然背後から首に抱きついてきた理輝を気に書ける風もなく、ぼくは読書活動を続ける。ページをめくり、次の行を視線で追った。
「めいが好きだー!」
「分かったから、ちょっと黙れって」
めいとはちなみにぼくの名前で、漢字で書くと芽衣。女の子みたいな名前だとからかわれることはよくあったが、ぼくはさして気にしたこともない。
「ひでえ! おれがこんなに愛を伝えているのに!」
「いやいや分かってるってちゃんと。分かってるから、とりあえず黙れ」
ふむふむ、つまり犯人はあのとき妹がいたからあんなことをしたからで……ああ、もしかしてあの犯人が『親戚』って言ってたときから伏線が……え、犯人違うの? フェイク? でも、え、そんな、だってそうすると――
ちなみにぼくは今とある推理小説を読みふけっており、タイトルは愛読書であった『プラスAから始まる殺人』の続編、『マイナスBにて終わる殺人』というものだった。昨日発売したばかりで、購入してからというもの起きているほとんどの時間をこの本に視線を向けることに費やしていた。
そもそも『プラスAから始まる殺人』はそれだけで立派な一冊の推理小説として成り立っており、それはそれで驚きの結末を迎えるものでファンを感嘆とさせたが、それゆえに続編が出るとは誰もが思いもしなかっただろう。それも『プラスBにて終わる殺人』は、例えば探偵が同じで登場人物も多数が被っている別の事件、という形の続編ではなく、むしろ『プラスAから始まる殺人』の「解決編」として位置づけられているのだ。『プラスAから始まる殺人』はそれ単体で解決を見せたものと思っていたが、実はそれは真の解決ではなく、別の真実が隠れていたというのを明らかにしたものだった。
発売が決まった当初から芽衣は興奮で眠れない日々を過ごし、今こうしてようやくその本が手元に手に入っているのである。他のことなど気にかけてられないというのが本音だった。
気が付いたら静かになっていたのでちらりと振り返ってみると、人のベッドの上にあがり、その片隅で抱えた膝に枕をのせてそこへ顔を埋めている友人の姿があった。構ってやらないからいじけているのだろう。でもそもそも待ちに待った本を手に入れて静かに一人で読みふけりたいところを、家にやって来たこいつを押し返さないで部屋に入れてやっただけでもありがたく思えといいたい。だから、無視して読書を再開することにした。
ちなみに、いつ頃始まったかは忘れたが彼がところ構わずぼくに好きだと叫ぶのはいつものことで、対するぼくの反応もいつものことだった。慣れというか既に一種の日常茶飯事の出来事で、特段反応することもない。
ほう、つまりその妹が……でも、その妹の存在なんて……ああ、ぷらえーの最終章の最後、犯人が言っていた意味深な台詞はこういうことだったのか……あ、ああー、あの件はその犯人自身が、っていう意味じゃなく、その彼が見た、っていう意味で……なるほど――
「めい、めい」
入りこんでいた世界に割って入った異物なその声に現実に引き戻されると、服のすそがちょんちょんと引っ張られていて、振り返ると理輝が眉を垂らして捨てられた子犬のような目でぼくを見つめていた。
「おれ、帰った方がいい?」
「え、なんで?」
突然言い出した台詞に、現実に引き戻された不快感を示していたのも途端に忘れて、ぼくはきょとんとする。家に押しかけてきてすぐ帰るというのもどうなのだろう。
「おれ邪魔かなー、って……」
「別に邪魔でもないけど」
何も離さないで部屋の隅でじっとしている分には何も邪魔ではない。
「うー、でも……やっぱり、帰るよ」
「えー、りー帰っちゃうのかよ。折角来たんだからそんなすぐ帰んなって。ほら、その辺の本棚漁っててもいいからさ」
初めからいなかったならいなかったでいいが、いたものが突然いなくなるのもそれはそれでまた空気が変わって読書に集中できなくなるかもしれなかった。
と、色々理屈をつけてみたものの、ただ単に読後の感想を誰かにぶちまけたいという気持ちもある。話が理解できなくても、聞いてくれるだけでいい。そもそも、『プラスAから始まる殺人』に関してはぼくは何度も理輝に素晴らしさを説明しているので、実際呼んでいなくても話のほとんどを理解しているだろう。このときのぼくは、本を一冊読み終わると眠くなるという自分の特性を忘れていたのである。
ちなみにりーとは理輝の小さい頃からの呼び名だった。
「えー、だって漫画ないし……」
ぼくの家には漫画がない。別に読まないわけでもないが、特別買ってまで読みたい漫画もないために、読むとしても理輝から借りる程度だ。
理輝はバカだから小説なんてほとんど読んだこともないだろう。
「え、ほら、じゃあおれもすぐこれ読み終わるから」
「後どれくらい……?」
「……五時間くらい」
「ながっ!」
言ってから確かに長いと自分でも思った。
「うーん、じゃあほら、黙ってれば別にずっとおれにぎゅっとしててもいいからさ、帰んないでよ。今日泊まってってもいいし」
え、まじで? と目をぱちくりとさせる理輝。その様子を見て、こいつ睫毛長いな、とどうでもいいことを思った。
ちなみに、明日から高校は冬休みに突入するので泊まっていっても別段支障はない。
「うんうんマジで。だから読み終わるまでそこにいてよ」
「わーいやっためい大好きー!」
「はいはい」
いつも通りのやり取りを終えると、理輝はぼくの背後からぎゅっと体を抱きしめて首筋に鼻をすりすりと寄せてきた。少しくすぐったいが、慣れればどうということもない。そして理輝が黙っていさえすれば邪魔でもない。むしろ少し肌寒いくらいだったから、理輝の体温がほどよく温かかった。
その状況で、ぼくは読書を再開した。





夕飯を告げる声に現実世界に戻り、階下に降りると察しのいい母は理輝の分まで夕飯を用意していた。理輝がうちで夕飯を食べて行くことも、泊まって行くこともよくあることなのである。
夕飯の最中も続きが気になって仕方がないぼくはただ箸で食べものを口に運ぶ機械のようになっており、口数も少なく生返事をするばかりで、代わりに理輝と母がよく喋っていたように思う。小さい頃からの家族ぐるみの付き合いで、母は理輝のことをいたく気にいっていた。
多分何を食べたかと聞かれても覚えていない夕食を終えると階上の自分の部屋に戻り、読書を再開した。残りページもあと少しで、クライマックスにさしかかる。けれど終わりに近いからといって油断ならないのがこの人の作品で、最後までどんでん返しが用意されている可能性があるのだ。
少し寒いなと思い始めた頃、洗い物を手伝っていたらしい理輝が丁度戻ってきたのか、ふわりと背に体温を感じた。胴に回される手が胸の前で組まれる。
気にせずにぼくは読書を続ける。
特別に爽快なアクションがあるわけでもないが、手に汗握る展開が続き、代わりに痛快な推理が物語に響く。登場人物に動きがあるわけでもないのに、鬼気迫る文章に手に汗を握り、気が付いたら理輝の手をつかんでいたが、何も言わず理輝は握り返してくれた。さりげなく汗をその手で拭く。
最終章まで予想だにしなかった展開が続き、最後の最後まで飽きさせない文体で、最終的に主人公の台詞で締めくくると、『了』の文字が目に捉えられた。
しばらくそのページを開いたまま、無言で余韻に浸る。ふうと息を吐き出し徐々に意識を現実へ帰還させると、理輝が横からぼくの顔を覗き込んでいた。
「……読み終わったよ」
「おう、お疲れ」
胸を抱かれたまま、理輝のあごにパンチをくらわせないように避けながら大きく伸びをする。体を後ろに倒すと理輝が支えてくれた。見上げると理輝の顔がある。
「……暇じゃなかった?」
「ううん、暇じゃなかったよ」
「何にもしてなかったのに?」
「めいの体ずっとぎゅってしてたから」
大きく欠伸が出た。どうやら読書を終えると眠くなるという持病が発症してきたらしい。読み終えた満足感に浸りつつ、色々な渦巻く感情を目の前の友人にぶつけたい思いもあるが、それにも勝る眠気がある。
「どうした、眠い?」
「うーん」
体を預けたまま、瞳を閉じようとするぼく。
「どうしよ、夕飯まで寝てるから母さん呼んだら起こして……」
「いやいや夕飯さっき食べたから」
「えー、そうだっけ……」
もはや夕飯を食べた事実さえ忘れているぼくだった。
「じゃあ、寝かせないようにして……」
「そう言いながらなんでベッドに這って行くんですかめいさん?」
気が付いたらいそいそと理輝の腕から離れてベッドに四つん這いで近づいているぼくがいた。
「だって、お風呂入らなきゃ……」
「いやいや言葉と行動が噛み合ってないですよ」
ベッドにもぐりこんだぼくを、理輝は苦笑したように見つめている。長い睫毛を、ぼくは正面から見据えてみた。
「……ねえ、りー」
「ん?」
「……暇じゃなかった?」
「いやそれさっきも聞いたし。暇じゃなかったよ」
あれ、そうだっけ……聞いたような気もしなくもない。
「何にもしてなかったのに?」
「めいの体ずっとぎゅっとしてたから」
なるほど、同じやりとりをしている気がしなくもなかった。
「そんなんでいいんだ?」
「うん、おれ……めい大好きだから!」
「うるさい黙れ眠い」
「めいさんひどい!」
眠気が襲いかかる頭にうるさい声が響くと、きんきんと頭痛がする。自然と、目をつむった。
「あのー……めいさん?」
「なに」
「寝るんですか……?」
「寝ない」
「いやどう見ても寝る姿勢……」
んー。声をあげながら、目を開く。戸惑うようにぼくを見つめる理輝の顔があった。
「……りーってさ」
「え?」
「りーって、おれのこと好きなんだ」
「な、え、えっと、ご、ご迷惑ですか……?」
「ううん、別に……好きなだけ勝手に言っててもいいよ」
あ、そうですか、なら勝手に言わせていただきます……なんてなぜか気弱にぼそぼそと口の中で喋っている理輝。
「何回そう言ったってさ、別にいいよ。静かにしてほしいときに黙っててくれれば。別に困りはしないよ。だから、ちゃんと聞かないけど、別に言ってたって、いいんだよ」
眠くて言語が色々破綻しているし何を言いたいのか自分でもよく分からなかったが、理輝もよく分からなかったのだろう、呆然とぼくの言葉を聞いていた。しばらくぼうっとした後で、
「は、はい……」
とようやく声をあげたのだった。
「……ほら、何やってんの」
布団をあげてぽんぽんとぼくは隣側を叩いた。
「え?」
「寒いじゃん、何してんの早く」
一瞬「この人何言ってるんだろう」みたいな顔をした後に、え? と再び声を上げた後、ぼくが睨んでいるのを見ると、理輝はようやくおずおずと隣にもぐりこんできた。
「失礼しまーす」
「ん」
小さく声をあげて、隣でこちらを向いて寝そべった理輝の胸に顔を押し付ける。
「め、めい……?」
戸惑っている様子の理輝が、なぜだかおかしくて楽しいと思った。ぼくの目の前で心臓がどくどくと鳴っていて、それが子守唄のように心地いい。
瞼が再び落ちていく。眠気が理性を打ち倒して、勝利へと一直線に走って行く。ぼくに触れるか触れないかで宙をさまよっていたであろう理輝の手の感触が、そのうち背中へと落ち着いた。
「……あのさ」
「は、はい?」
理輝は素っ頓狂な声をあげた。
「別に何回言ったっていいしさ、受け止めるけどさ、もし受け止めきれなくなったら……そのときは、責任、取ってよね?」
「へ?」
間抜けな声を上げた後、続けて理輝が何かを言ったような気がしたけれど、その後すぐぼくの意識は闇に落ちて、理輝の胸の中で安らかな眠りについていた。






推理小説とか、特にアガサクリスティーとかはぼくもよく呼んでたんですけれども、最近読まないので久しぶりに読みたいですね。
緻密なプロットとか書くのも好きなんですが、プロット仕上げて満足して、たまに書くなら結局こういう何も考えないで書けるものの方が好きみたいです(笑)
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【2010/07/27 00:10 】 | 未分類 | page top↑
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