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【SS】Who Are You? -01-
去年、理系白衣男子合同誌「酸化還元」に寄稿させていただいた話。
ということはつまり、そういう話です。
自分ではあまり書かない文体であまり書かない話を書いたので、何これあんた書いたの? って感じですが、普段くだらないの書いてても管理人はこういうのも書けるんだよ、ってことで。
サイトブログ限定公開とかだと案外手を抜いてるとこ多々というか書きたい放題やってるだけなんですが、ちゃんと本気出して書いた話です。
ここ一年で書いたやつで、一番気に入ってる話かもしれない。
ということでSSと言うには少し長いですが、どうぞ!

Who Are You?

-01-





「さあ、戦争を始めよう」
――この人、何を言ってるんだろう。
例えば今この状況を小説の冒頭だとするならば壮大な出落ちなわけだけれども、事実は出落ちでもなんでもないわけで、敢えて言うとするならば、むしろ真実――話の落ちだった。
自信満々に満面の不敵な笑みを浮かべ、もしも眼鏡常用者ならブリッジを押し上げているに違いないといった様子で人差し指を眉間に突き立てている彼は、僕にはただの変態にしか見えない。ちなみに彼は眼鏡を実験中に防護用具としてしかかけない上、それ以外に普段装身具として身につける習慣も視力的な必要性もないどころか、例えば僕のシャツがめくれあがった一瞬に、ズボンからはみ出している下着の色まで遠目で判別できてしまうほどの視力を持っていた。
それとは別に、今日はそもそも諸事情により下着を着用していない僕は、そんな友人を若干引いた目で見ていたわけだが、彼の言葉が唐突で理解できないことは日常のことで、唐突といってもその言葉に至るまでの前置きが大分長かった気もするのだが、つまり引く以前に話の内容が全く持って僕には理解不能だったわけだ。
三方――みかた。
それがこの友人であり悪友である彼の、名前だった。
名前――らしかった。
僕は彼をみかたと呼んでいるが、つまるところ、みかたとは本人の自称だった。いや、誰しもほとんどの人が友人関係を築くに至って、学部も違う初対面の相手に自己紹介するときなど大抵名前とは自称であるし自己紹介とはつまりそういうものであるのだが、僕はそれなりの期間連れ添ってきたつもりの彼の姓を知らないわけで、三方が本名であるかどうかすらも判別できる知識を有してはいなかった。
名前はと訊ねたとき、彼は逡巡した後『みかた』と口の中で呟くようにして、続いて漢字はこれにしよう、とおもむろに赤チョークを手に取り黒板に『三方』と書いたのだ。御世辞にも字がきれいとは言い難く、何か新しい漢字でも創造したのかと初めは思ったくらいだが、よく見るとありきたりで、小学校の低学年で習うような漢字が二文字並んでいた。
みかた――三方。
これにしようという口ぶりから考えて漢字とそれに読みがあるのではなく、つまり読みがあって漢字が出来上がった、そういう具合になる。だからといってどうということもないが――どうということもない。
事象と原因がどうであろうと、鶏が先か卵が先かと言っているようなもので、何を僕が考えようとも結局事象も原因も彼のみぞ知るわけで確かめる術はない。
名前があって存在があるわけではない。
存在に決まった名前があるわけでもない。
ならば彼の戯言なんて心底――どうということもない。
――という、真実前置きでもなんでもない、彼以上の戯言を僕は長々と続けてしまったわけだが、僕の友人が冒頭の結論に至るにあたって、始まりは――一時間前。本当の始まりはもっと前であったのかもしれないが、しかし、原因も発端も大抵は時系列における明確な位置づけが難しく、そもそも僕の知るところではない。
そもそももそもそもの、みかたはその場の思いつきで行動することが多く、彼の発言に、なぜそこに思い至ったのかなどと考えていては、時間の浪費というものだろう。
――ともかく、その一時間前、僕はT大学理学部第三校舎三階第三実験室で目を覚ましたのだった。

Who Are You?-2-
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【2010/08/25 16:57 】 | 未分類 | page top↑
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