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ピカチュウ【SS】
ピカチュウ、それは先へと導くための光となるだろう。
ピカチュウ



電波がつながる。電流が流れる。
体中が痺れて、ああ生きているのだなと感じた。息を吐く。溜まっていた唾にせき込む。
ああ、僕は生きていた。
「ピカ……チュウ」
名前を呼ぶ。ぼくのポケモンの名前だ。
涙で滲んだ目の前で、黄色の小さな形をした生き物が小さく体を揺すらせて返事をするように鳴き声をあげた。
うっすらと分かるのは、ピカチュウが僕の手を握って必死に生かそうとしていることだ。
体がまだ痺れる。ピリピリと痛む。自らの体が放電しているような感覚と言うのが、比喩ではないと感じる。
ああ、僕は生きていた。
もう一度、改めて心に浮かぶ言葉だった。
なぜだろう。
僕が望むのは緩やかな終焉だった。緩慢な死だった。決して能動的でなく、遠回しに死を求めることだった。
この不備を抱えた体に、生きながらえさせるだけの道具を与えないだけなのだ。
しかし、僕は生きていた。
生きていて、死ぬ間際何を思っただろうか。その死は緩慢だっただろうか。緩やかだっただろうか。
死さえも自らの意思で積極的に求められない僕に下ったのは、ただ息苦しいだけの無様な時間だけだったのだ。
心臓が止まる。息ができない。ただ自分が招いただけの苦しみ。
ピカチュウが鳴く。僕の傍らで鳴いている。
ピカチュウなぜ僕を生かした? なぜ僕を助けた?
声を出して問い詰めたい衝動に駆られながら、声が出ない。むせ返る喉を、もう一度開こうとは思わなかった。
いや、それは言い訳に過ぎないだろうか。僕は生きていると実感したとき、ああよかったと、少しばかりの安堵を感じたのだ。
なぜだろう。なぜだろうか。
ピリッとした痛み。
傍らから電気が漏れ出している。見なくても分かる。ピカチュウだった。
意図的ではない、まるでどうしようもなく電気が流れだしてしまっているような、言うなれば漏電だった。
しかしそれがなぜ分かるのだろう。目を開けるだけの気力をまだ回復していなくてピカチュウを確かめることもしないのに、トレーナーでありながら僕が今まで受けたこともない電気を、ただ身に受けただけで感じ取れるもの。
電波がつながる。
目覚めた瞬間ふと僕がそう思ったのは、電気とは違う何かが、繋がっているからだろうか。
不思議と、ピカチュウを責め立てる気はもう起きなくなっていた。
なぜだろう。ただそんな気力がないだけかもしれない。
横たえた自らの体が、冷たいと感じる。
暗い。暗い。このまままた眠りについてしまおうか。こんな場所で眠っては、この体で無事でいられると言う保証もないが、それほどに疲れていた。
瞼が明るくなる。目を開ける気力もない。気力はないけれど、僕は目を開けた。
ピカチュウが頬から電気をピリピリと放ちながら、仰向けになった僕を覗きこんでいた。
ピカチュウが鳴き声を上げる。赤い頬が、少しだけ湿っている気がした。放電の原因はこれだろうか。しかし、なぜ頬が湿っているのかは分からない。
僕は、分からない。
分からないさ。
ただ僕には、ピカチュウの漏電する頬が少し明るすぎて、目が痛いだけだった。
体は相変わらずだるいけれど、僕は無理矢理起き上がる。心配する風のピカチュウに僕は何も声をかけることはなかったけれど、それでもピカチュウは僕の歩きだす意思を汲み取ってか、道先へと先導して走っていった。
たまに振り返り僕を導くピカチュウのその様は、まるで地下水道に迷う物語の主人公を先へ案内するただのネズミのようだと、僕はふと思った。







ちょっと暗めの話が書きたいと思ったらこうなってしまいました。
ピカチュウと言えばポケモンの代表みたいなものがありますよね。
生と死とか、そういうのとポケモンを絡めると結構奥深くなるので好きなんですがワンパターンになりそうで怖いです。
ありがとうございました。

フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメギャラドスもどうぞ
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【2010/12/08 00:30 】 | ポケモン | page top↑
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